2012年 06月 13日
黒き花 |
あの妖しく美しいオカルト作品を再び、ここに記そう。
紅のワインを召し上がりながら、V.ゆねりあが創造した新感覚のオカルトの世界を
心ゆくまで、ご堪能下さいまし。
『黒き花』
「すべては、あなたが悪いのよ」――と泣きじゃくる彼女の横で、私は黙って俯きました。
今まで、何度も「好き」と「愛している」って囁きながら、互いの呼吸と鼓動を一つになって感じあっていた仲なのに恋の終わりは、突然やってきたのです。
「ごめん」
云い終わらないうちに私を叩いた彼女。その刹那、零れた涙は、真夏の熱帯夜に散ったひとひらの花のよう。
そして、バタンと玄関のドアが閉まり、私はすぐさま彼女の後を追いかけました。手を握って、「もう絶対にバカなことはしないから」と許してくれるまで謝ろう――そう考えていたのに彼女は見つからなかったのです。
遠くで救急車のサイレンが鳴り、近くで合コン帰りの若い男女が落ち込む私を見ながら嘲笑っている光景。それは、まさに都会で繰り広げられている日常そのものでしたが、私にとっては違いました。今まで、ずっと一緒にいた彼女がいなくなったのですから。
夜が明け始めた頃。自宅へと戻った私は、部屋の片隅で一人、真っ二つに折られたケータイを握り締めながら泣きました。涙で視界が歪む中、「ごめん」とつぶやきながら。
百回目の「ごめん」を云った時、背後で聞きなれた声がしました。
「じゃあ、一緒に旅立ちましょう」――彼女でした。沈んだような声と背中に伝わる冷たい彼女の体温。その瞬間、私は真実を思い出したのです。
「ああ」――泣き疲れて、憔悴していた私は、振り向かずにそっと窓辺を見つめました。
揺らめくカーテンの隙間から届いた朝の陽射し。オーロラのように幻想的な光は、私たちが過ごした日々のように思われましたが、それは理想の話。なぜなら、私は「別れ」を告げた彼女を殺めてしまったのですから。
でも、たった今、私は亡くなった筈の彼女にナイフで刺され、紅の骸へと変貌しつつあるのです。床に散らばったままの花瓶と黒い花のようになった彼女の骸を双の瞳に映しながら。
★★★よかったら、感想をお寄せ下さいませ★★★
紅のワインを召し上がりながら、V.ゆねりあが創造した新感覚のオカルトの世界を
心ゆくまで、ご堪能下さいまし。
『黒き花』
「すべては、あなたが悪いのよ」――と泣きじゃくる彼女の横で、私は黙って俯きました。
今まで、何度も「好き」と「愛している」って囁きながら、互いの呼吸と鼓動を一つになって感じあっていた仲なのに恋の終わりは、突然やってきたのです。
「ごめん」
云い終わらないうちに私を叩いた彼女。その刹那、零れた涙は、真夏の熱帯夜に散ったひとひらの花のよう。
そして、バタンと玄関のドアが閉まり、私はすぐさま彼女の後を追いかけました。手を握って、「もう絶対にバカなことはしないから」と許してくれるまで謝ろう――そう考えていたのに彼女は見つからなかったのです。
遠くで救急車のサイレンが鳴り、近くで合コン帰りの若い男女が落ち込む私を見ながら嘲笑っている光景。それは、まさに都会で繰り広げられている日常そのものでしたが、私にとっては違いました。今まで、ずっと一緒にいた彼女がいなくなったのですから。
夜が明け始めた頃。自宅へと戻った私は、部屋の片隅で一人、真っ二つに折られたケータイを握り締めながら泣きました。涙で視界が歪む中、「ごめん」とつぶやきながら。
百回目の「ごめん」を云った時、背後で聞きなれた声がしました。
「じゃあ、一緒に旅立ちましょう」――彼女でした。沈んだような声と背中に伝わる冷たい彼女の体温。その瞬間、私は真実を思い出したのです。
「ああ」――泣き疲れて、憔悴していた私は、振り向かずにそっと窓辺を見つめました。
揺らめくカーテンの隙間から届いた朝の陽射し。オーロラのように幻想的な光は、私たちが過ごした日々のように思われましたが、それは理想の話。なぜなら、私は「別れ」を告げた彼女を殺めてしまったのですから。
でも、たった今、私は亡くなった筈の彼女にナイフで刺され、紅の骸へと変貌しつつあるのです。床に散らばったままの花瓶と黒い花のようになった彼女の骸を双の瞳に映しながら。
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by yunerian
| 2012-06-13 00:57
| オカルト