2011年 11月 28日
オカルト作品 |
今日も美しく妖しいオカルトな作品を掲載します
タイトル
「師匠と私」
「あなたは、物書きには向いていません。今すぐ、この世界を去って、ふつうの社会人に
なりなさい。分かったわね?」――あれは、寒い真冬のことでした。
女でありながら、一度も化粧をしたことがないと豪語していた師匠の横顔を紅に染める夕陽を
背にして、無言のまま立ち去った私。
――これが師と会った最期の日。
それなのに会話をするわけでもなく、ただ一方的に物書きの世界を去れと言われたことに腹が
立ち、今日まで師を憎み続けてしまった私――その双の目には、エンジェルメイクをされた
師が棺で安らかな表情で眠っていました。
「おや? あなたは・・・まさか、母の葬儀にきて下さるとは」
喪服姿の師のご子息が私を見て、驚いていました。
「ご無沙汰しております。いつまで経っても、私は師匠の弟子ですから当然のことですよ」
「そうですか。では、やはり、あなたは物書きの道に進まれたのですね?」
師のご子息の問いに「まだまだ駆け出しですけど」と答えた私。すると、師のご子息は私に
一枚の封筒を差し出しました。
「これは、なんですか?」
「母から預かりました。詳しいことは、僕にも分かりません。ただ、母の死後、あなたが
ここへ訪ねてくることがあれば、これを渡して欲しい・・・と」
「そうですか。生前、師匠がそんなことを」
「では、私はこれで失礼いたします」
師のご子息が受付に戻ってゆく姿を見送った後、私は封筒を開けました。
そこに入っていたのは、なんと御札が一枚と「己の道を信じ、頑張りなさい」とだけ書かれた
手紙。それを目にした時、私は師匠の言葉を思い出しました。
――「言葉は時として、現実世界に影響を及ぼす」
つまり、師は昔からオカルト作品ばかりを書く私の身を案じて、この世界を去れと言ったの
でしょう。言霊論を重んじる方でしたから。
「例え、あなたがどんなに妖しく美しい世界を描いたとしてもオカルト作品に違いはない。
それだけは覚えておきなさい」――帰り際、師が私にそう伝えてくれたような気がしました。
「ありがとうございました。師匠」
こうして、私は師に愛されながら、オカルト作家となったのです。
※フィクションです。

タイトル
「師匠と私」
「あなたは、物書きには向いていません。今すぐ、この世界を去って、ふつうの社会人に
なりなさい。分かったわね?」――あれは、寒い真冬のことでした。
女でありながら、一度も化粧をしたことがないと豪語していた師匠の横顔を紅に染める夕陽を
背にして、無言のまま立ち去った私。
――これが師と会った最期の日。
それなのに会話をするわけでもなく、ただ一方的に物書きの世界を去れと言われたことに腹が
立ち、今日まで師を憎み続けてしまった私――その双の目には、エンジェルメイクをされた
師が棺で安らかな表情で眠っていました。
「おや? あなたは・・・まさか、母の葬儀にきて下さるとは」
喪服姿の師のご子息が私を見て、驚いていました。
「ご無沙汰しております。いつまで経っても、私は師匠の弟子ですから当然のことですよ」
「そうですか。では、やはり、あなたは物書きの道に進まれたのですね?」
師のご子息の問いに「まだまだ駆け出しですけど」と答えた私。すると、師のご子息は私に
一枚の封筒を差し出しました。
「これは、なんですか?」
「母から預かりました。詳しいことは、僕にも分かりません。ただ、母の死後、あなたが
ここへ訪ねてくることがあれば、これを渡して欲しい・・・と」
「そうですか。生前、師匠がそんなことを」
「では、私はこれで失礼いたします」
師のご子息が受付に戻ってゆく姿を見送った後、私は封筒を開けました。
そこに入っていたのは、なんと御札が一枚と「己の道を信じ、頑張りなさい」とだけ書かれた
手紙。それを目にした時、私は師匠の言葉を思い出しました。
――「言葉は時として、現実世界に影響を及ぼす」
つまり、師は昔からオカルト作品ばかりを書く私の身を案じて、この世界を去れと言ったの
でしょう。言霊論を重んじる方でしたから。
「例え、あなたがどんなに妖しく美しい世界を描いたとしてもオカルト作品に違いはない。
それだけは覚えておきなさい」――帰り際、師が私にそう伝えてくれたような気がしました。
「ありがとうございました。師匠」
こうして、私は師に愛されながら、オカルト作家となったのです。
※フィクションです。

by yunerian
| 2011-11-28 01:36
| オカルト
|
Comments(2)
このお話、フィクションじゃなく、
ノンフィクションになるといいですね(^_^)v
ノンフィクションになるといいですね(^_^)v
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